<世間話>
雪沢村の茅刈(ゆきさわむらのかやかり)

秋田雪沢の辺りに萱刈りを生業とする者がいた。昼食はいつも五つになる息子が持ってくるのだが、ある日いつまでもやって来ない。迎えに行くと、道に巨大な蛇が横たわり水を飲んでいる。見ると、息子の靴が水に浮いている。蛇の腹は息子を飲み込んだように見える。茅刈りは鎌で蛇の頭をかき切った。腹を切り破ると、息子が出てきた。しかし、蛇に飲まれたことから、体には一毛も無く、目や鼻も腐れ落ちてしまった。十四歳まで生きたが、疱瘡で亡くなったと小野崎某が私に語って聞かせた。

<民話>
羽保屋さんの大男

昔、釈迦内村に住む男が長木村の羽保屋山へ、マダの木の皮を剥ぎに出かけた。仕事は順調に進み、家に帰る帰路、道ばたに大きな鏡餅が3つ落ちていた。男はそれを拾い、息子の太郎に食べさせようと足を速めた。ところが、男は急に激しい空腹を覚え、我慢しきれなくなって、餅の1つにかじりついた。 激しい空腹のため、思わず3つの餅を食べてしまうと、男の体はぐんぐん大きくなる。家に帰り着いたが、男は家の中にも入れない。父の帰りを待っていた太郎が驚いて外に飛び出すと父は山のような大男に変わり、泣いている。

事情を説明し「オレはもう山へ行って暮らすから、お前は立派な人になってくれ」と泣きながら山の方に歩いて行った。この話は村中に広がり、村人たちは気味悪がって太郎の家に近づかなかった。幼い太郎は暗い家の中で毎日父の名を叫びながら泣き続けた。

それからまもなく、長木村のあちこちで、毎晩農作物が荒らされ、そこには大きな足跡がいくつも残っていた。「このままでは農作物が全滅してしまう」ということで、村人は何日も相談した結果、羽保屋山に祠を建てて、大男の悲しみを慰めることにした。これが、今の羽保屋大神である。それからは、農作物が荒らされることもなく、太郎も村人からの援助で立派な成人になったという。

<道祖神>

<カシマサマ>

<虫追い>

<消えた金塊>